コールセンターの離職率は9割とも言われており、職場環境について、
- 「キツイ」
- 「ツライ」
- 「ストレスがたまる」
そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
離職率が高い原因はそういった理由もあるのですが、それはどんな仕事でも共通している部分かもしれません。
コールセンターのスーパーバイザー(SV)として数社のコールセンターで働いていた僕は、実際のところ入社後3日程で辞めてしまうオペレーターなども数多く見てきました。
今回はコールセンターの離職率が高い4つの理由について、管理者目線とオペレーター目線の中立の立場からお伝えします。
コールセンターの離職率が9割になってしまう4つの理由
基本的にお客様とのつながりがない
大半のコールセンターでは1つ1つの電話を受け、マニュアル通りの対応をしたらそれっきりです。
「電話応対を行い淡々と履歴を残し次のお客様の応対に臨む」というあまりにもあっさりしたルーチンなんですね。
お客様との「長期的な付き合い」や「信頼関係の構築」がほとんどない仕事なんです。
こういったことがコールセンターの仕事の「やりがい」を感じられずに結果として離職してしまう理由の1つになっています。
電話口の向こうのお客様から「ありがとう、助かったよ」「〇〇さんのおかげで操作方法が分かったよ、ありがとう」と感謝の言葉をもらうことは確かにあります。
それでもなお、実際に面と向かってface to face で話していないので、対面で接客することに比べて印象に残りづらいんですね。
実際にお客様と面と向かって対応することと、電話で対応することでは、どうしてもお互いの距離感に差異が出てしまいます。
応対を終えた後のお客様から後日再入電があった場合でも、電話を受けたオペレーターは1度目に受けたオペレーターの履歴をもとに応対していきます。
結局のところマニュアル通りに対応しているので、悲しいかな「あなたじゃなくてもいい」んです。こういった理由がコールセンターのオペレーターの欠勤が多いことにも関係しています。
オペレーター同士の交流が少ない
離職率が高い2つ目の理由として、オペレーター同士の交流が少ないという理由があります。
電話口のお客様は何かしらの理由があってコールセンターに電話をします。電話口のお客様に対して、問題解決を行うのがオペレーターの任務であり、オペレーターは「対お客様」が基本のスタンスです。
隣同士の席のオペレーター同士で話すことはもちろんありますが、オペレーター同士で協力して何かを作り上げたり、企画したりすることがほとんどないんですね。そのため、社内の人間関係が希薄になりやすい傾向があります。
逆に煩わしい人間関係が苦手という方はコールセンターで長く勤めていたりすることが多いですね。
淡々と仕事をこなし定時に帰る一匹オオカミ的な存在の人です。僕が勤めていた数社のコールセンターにはそのような人が必ず数人いました。そのような人にとってはコールセンターは天職と言えるかもしれません。
罵声、暴言、クレームが多い
業種にもよりますが、お客様から「ふざけるな!」「フルネームを教えろ!」「会社に乗り込んでやる!」などの罵声を浴びせられることも少なくありません。
お客様の理不尽な言動に対しても「申し訳ございません」「ご不便をおかけします」などのお詫びの言葉を伝えなければなりません。
このようなことがストレスになり、コールセンターを辞めてしまうオペレーターも多くいます。
ストレスに強くなければコールセンターの仕事は務まらないか、と言われると一概にそうとも言い切れません。ストレスに強いというのは結局のところ「我慢強い」「打たれ強い」ということでもあります。
我慢が続くとどうしても「爆発」してしまうんですよね。張り詰めた糸はどうしても切れやすいんです。ストレスがたまって最終的に辞めてしまう人も多く見かけました。
罵声、クレームに対して「ある程度受け流せる人」の方がコールセンターの仕事を長く続けられていることが多いです。
暴言を吐かれても「結局見ず知らずの他人から言われていること」とサラリと受け流してしまえるんですね。そのような人の方が会社としても雇いやすいかもしれません。
評価基準があいまい
オペレーターの評価基準は大きく分けて4つあります。
- 受付件数(多いほど良い)
- 通話時間(短いほど良い)
- 後処理時間(短いほど良い)
- 応対品質
どのコールセンターも基本的にはこの4つで評価が決まります。各項目の内容を書き出すと、
受付件数
1件でも多くの電話を受電することが会社から求められます。受付件数を多くするためには「通話時間を短くする」こと、「後処理時間を短くする」ことが挙げられます。
通話時間
1通話あたりの通話時間は短い方が良しとされます。短時間で問題解決出来ているということになり、評価されます。
後処理時間
後処理時間は短ければ短い方が良しとされます。お客様とのやりとりを短時間で履歴に残せるかどうか、というところを評価しています。タイピングが早い人は有利になりますね。
応対品質
会社によっては「応対品質」を評価基準にしています。1通話内でのオペレーターの応対の品質を調査するものですが、評価項目は非常に多岐にわたり細分化されています(クッション言葉の使用など)。
SVや課長クラスの方が抜き打ちで通話をモニタリング(こっそり聴く)していたり、外部委託している応対品質調査会社に通話履歴を提供し、採点されることもあります。
例としてお客様との会話の中で、共感の言葉、傾聴の姿勢、お詫びの言葉、クッション言葉の使用の有無などが採点基準となります。
評価基準の矛盾点
お客様に対して親身になりお話の詳細を聞けば聞くほど、「通話時間」が長くなってしまい、その分話の内容を履歴に残さなければならないので、「後処理時間」が長くなり、結果として「受付件数」も減ってしまうんですね。また、複雑で難しい内容の問い合わせを受けた場合も同じことが言えます。
お客様によっては、問い合わせの内容と関係のない自身の身の上話や世間話などをされる方もいます。そういったお客様に対して、お客様を不快にさせることのないように話を切り上げる技術が必要になります。
「オペレーターにはみな平等に複雑で難しい内容の問い合わせや、話の長いお客様からの電話が入るものである」と良く言われますが、案外そうでもないんですよね。
複雑で難しい内容の問い合わせがあると立て続けに続いたりします。1ヵ月の間そういう問い合わせばかりという時もザラです。
そういった月の評価は平均より数字が悪くなるので、頑張ったのに報われないと感じることになってしまいますね。
コールセンターの離職率を下げる方法
数字だけでオペレーターを評価しているだけではオペレーターのモチベーションを高めることにはなりません。対お客様との仕事に関しては、上記のような数字はあくまで「水物」です。日によって月によって変わってくるものです。
数字だけでオペレーターを評価し、一個人としてオペレーターを評価しない会社であるのなら、オペレーターにとってはやりがいを感じずらく、結果として離職となってしまいます。
あくまでも数字は参考程度に留めておき、コールセンター全体の「相対評価」で個々のオペレーターを評価するのではなく、オペレーター個人のスキル、応対力にフォーカスをあてる「絶対的評価」にすべきです。
個々のオペレーターの特性、特徴、長所、短所を明確にし適宜フィードバックを行い、長所は更に磨きをかけ、短所は補っていく。
相対的評価ばかりであると、上位のオペレーターだけが報酬、報奨を獲得しやすいという状況を作りだしてしまいます。もちろん会社に貢献しているという点では、そういった評価も必要ではありますが。
中位以下のオペレーターに対しても、前月比などで数値、品質が向上したといった場合にはなにか応酬があるとモチベーションが維持できると思います。