相手の話を「聞く」のはとても簡単ですが、「聴く」となると忍耐力や集中力が必要になってきます。
仕事やプライベートでも、相手の話をしっかりと傾聴し、相手にとってベストな答えを導きたいものです。
では傾聴力(ヒアリング力)を高めるにはどうしたらよいでしょうか。
傾聴力とは?
傾聴力とは文字通り「傾聴する力」であり、相手の話にしっかりと耳を傾け、相手の心情や心境、背景などをイメージし、時には共感し、親身になって真剣に解決策を導こうとすることを意味します。
相手の話を傾聴するには、相当な忍耐力や集中力を要しますが、トレーニングによって傾聴力を高めることができます。
傾聴力を高めるとどうなる?
話し手側の立場から考えると、話をしっかりと聞いてもらえることで、たとえ解決策がすぐに導かれなかったとしても、話を聞いてもらったということだけで満足感が得られることが多くあります。
また、悩みを共感してもらえたことによって、自分自身が受け入れられたように感じられるという人もいます。
すなわち「聴く」事自体が相手にとってプラスになることが多いんですね。
話を聞いてもらえたことだけでも心がスーッとなることもありますが、さらに聞き手から有益なアドバイスなどが与えられると、話し手の人生にプラスになることがあります。
カウンセリングでは、話をしっかりと聞くことで相手の人生を良くしているんですね。
電話対応で傾聴力を高める9つの方法について
相手の言葉をただ単純に「聞く」(hear~聞こえる~)だけでは受動的です。
大切なことは相手の話を「聴く」(listen~耳を傾ける~)ことであり、相手の要望、心境、心情、背景を理解し、気持ちを汲み取ることです。このように相手の言葉に耳を傾けることから「傾聴」と言います。
特に顔の見えない電話においては、相手に寄り添っていることを声と言葉だけでしっかりと伝えることが大切です。
無理に解決策を伝えようとしない
相手から悩みを打ち明けられたりや相談をされると、
「何か気の利いた解決策を伝えなくては」
という気持ちが先行してしまうことがあります。そういった焦りから、思ってもいないことを言ってみたり、考えの浅いことをすぐにレスポンスしてしまうのは逆効果です。
話し手は必ずしも解決策を求めているとは限りません。「具体的な解決策を求めてはおらず、まずは話を聞いてほしい」と考えていることが多々あります。
どんな言葉を返したら良いか迷ったときには無理に解決策を考えようとせず、相手の言葉を確認したり、共感の気持ちを示す言葉を伝えるのが効果的です。
例
- 〇〇だったということですか?
- そのようなことがあったんですね
- それはとても心配だったでしょうね
- お気持ちお察しします
相槌のバリエーションを増やす
相手(お客様)の話を真剣に聞いていることを伝えるためにも、相槌は必要不可欠です。
「はい」だけの一本調子な相槌では、「本当に話を聞いてるのかな」とお客様は心配になってしまいますね。
そのために適切なタイミングで適切な相槌を使用することが大切になってきます。
相槌の例
- 「はい」
- 「さようでございますか」
- 「かしこまりました」
など様々なバリエーションの相槌を適宜使用し、お客様の話を1つ1つ受け止めていることを相槌によって明確に表しましょう。
そうすることで、「しっかりと話を聞いている」「理解してくれている」という安心感を与え、より一層お客様は大切な情報を伝えてくれることとなり、問題解決が容易になることもあります。
また適切なタイミングで、話の内容を確認する旨の相槌も重要です。
- 「〜ということは~だったということですか?」
このように確認をすることによって誤認識も防げますし、お客様としても自分自身の話をちゃんと聞いてもらえている、と感じ安心して話を進めることができるのです。
最終的な決断は相手が行うことを意識する
どんな悩みや問題でも、最終的には話し手側が決断しなければならないことを忘れないようにすべきです。
話し手の考えを尊重せず、すぐさま助言したり結論を急いだり、考えを押し付けるのは控えましょう。
どんな問題の解決策も、自分自身が納得できなければ根本的な解決になりません。忍耐強く傾聴し、最適解を導き出す必要があります。
相手の話を遮らない
会話の中で、相手が誤った情報を話しているときや、一方的に話しているときなど、どうしても中断して話を遮ってしまいがちですが、突然遮ってしまうのは印象がよくありません。
しかし緊急を要する場合など、どうしてもこちらの話を伝えなければならない場面もあるので、その場合は、
- 「お話の途中で申し訳ございませんが」
とお伝えし、こちらの話を聞いてもらいましょう。
このようにあらかじめ断りを入れることによって、相手が嫌な気持ちになることを防ぐことができます。
話し出しがお客様とかぶった際には、相手に譲る
相手との会話の中で、同時に話し始めてしまう場面があります。
その場合はすぐにこちらの話をストップし、相手の話を聴くようにします。
こちらが話すことをやめず、話し続けてしまうと印象が良くありません。
なんて我の強い人なんだという悪印象を与えてしまいます。特に電話対応において、話を譲らずに話続けてしまうと、
「話を聞けよ!」
と怒られ、クレームになってしまうこともあります。
こちらが伝えるべきことは、お客様が話し終えた後でも伝える時間があるので、かぶった際にはすぐに話すことを止め、お客様の話を優先させましょう。
「促しの言葉」を使用する
お客様からのご要望やご意見などを傾聴する際には「促しの言葉」を使用することも大切です。
- その後はどのようになったのですか?
などと質問することによって、お客様の隠れた本音や、事の詳細を話してくれます。そうすることで問題解決が導かれやすくなることもあります。
促しの言葉は「どんなふうに~」「どうして~」のような5W1Hを基本に考えると話が広がりやすくなりますが、促し方が悪いと話がそこで終わってしまうことになるので注意が必要です。
悪い促しの例
- そうなんですね
- ・・・はい
- それは良かったですね
ただ単純に「もっとたくさん話してほしい」と促すのではなく、「話の詳細を理解したい」という気持ちをしっかりとお客様に伝えられるように促すことが大切です。
相手の存在そのものに関心を持ってみる
「袖触れ合うも多生の縁」というように、いま目の前にいる相手は何かの縁があって出会った相手です。
存在認知と言って、人は誰でも認められないという願望を持っています。
まずは相手の存在そのものに興味や関心を持って接してみましょう。
事実確認だけでなく相手の気持ちを聴く
- それはいつ頃のことだったんですか?
- その時、あなたはどこにいたんですか?
相手の話を聴く上で、事実確認ばかりに徹していると、相手は尋問を受けているような気持ちになることがあります。
事実確認も時には必要ですが、何よりも「相手の気持ちや心境」を聴く事が大切です。
例
- それはさぞかし驚いたでしょう
- とても悲しいですよね
自分自身のことを理解してもらえたと感じると、信頼関係を築くことができ、より一層問題解決が容易になることがあります。
沈黙も貴重な時間と考える
会話中に沈黙が訪れたからいって、「何か言わなくては・・・」と思う必要はないことを覚えておきましょう。
たとえ沈黙が訪れたとしても、聞き手がしっかりと親身になっている状態であれば、それは貴重な時間です。
話し手が沈黙しているときには、考えを整理していたり、あなたにより大事なことを伝えるかどうか迷っていたりすることがあります。
沈黙を恐れず、話し手に寄り添っていることを示す言葉を伝えることも大切です。沈黙が長く続いた場合は、
「なにかお考えのことはありますか?」
と優しく問いかけるのも良いでしょう。
傾聴力を高めるメリットについて
傾聴力を高めることによって、集中力や忍耐力が自然と身につきますが、なによりも多くの話を聴くことによって見聞も広がり、自身を成長させるというメリットがあります。
話し手を否定せず容認することで、それまでの自分自身の枠組みにとらわれない新しい視野や考え方を得ることもできます。
こうしたことを積み重ねることにより、心にゆとりを持つことができ、他人を気遣う気持ちも大きくなっていきます。
相手が話しやすい雰囲気を作ることも大切
相手に安心して話をしてもらうには、話を促すような言葉や、「こちらはあなたの話を聞く準備があります」ということを伝えることが効果的です。
例
- いかがなさいましたか?
- よろしければご用件をお伺いいたします
- 何かございましたでしょうか?
- 他に何かご不明な点はございますか?
さいごに
今回は電話対応での傾聴力の高め方についてお伝えしました。傾聴力を高め、話し手がたくさん話すようになることで、話し手自身が悩みの本質に気づき、問題解決が図られるということもあります。
是非参考にしてみてください。