コールセンターではエスカレーション対応というものがあります。
省略して「エスカ」「エスカレ」と言われることもありますが、コールセンターのみならず、一般的なビジネスシーンでもこの用語が使われるようになってきました。
エスカレーション対応とは?
エスカレーションを英語で表記すると「escalation」で、「エスカレート(escalate〜段階をおって拡大、激化すること)」という言葉の名詞形です。
- 感情がエスカレートする
- 事態が悪い方向へエスカレートする
という使い方があり、良い方向よりも「悪い方向へ」拡大するようなニュアンスを含んでいます。
身近なもので、皆さんご存じの「エスカレーター(escalator)」がありますが、この言葉も「登っていくもの、上昇するもの、はしご」が語源となっています。
一般的には「エスカレートする」と動詞で使用することが多い用語ですが、「エスカレーション(対応)」という言葉はビジネスシーンではどのような使い方をするのでしょうか。
コールセンターやビジネス上でのエスカレーション対応って?
コールセンターやビジネス用語で使われるエスカレーション対応とは、
「上席者に対応を代わること」
を意味します。一般的に電話対応上で一次対応者が上席者に電話を代わることを意味しますが、窓口業務に従事している担当者から上席者へと対応が代わることもエスカレーション対応と呼ぶことがあります。
エスカレーション対応はなぜ起こる?
ではどんな時にエスカレーション対応が起こるのでしょうか?パターン別に解説します。
一次対応者の知識不足
一次対応をしたオペレーターの業務知識が浅く、受け答えがたどたどしい場合や、質問時に何度も保留にして時間がかかる場合などに、
- わかる方に代わってくれませんか?
- あなたじゃ話にならないので上の方に代わってくれませんか?
とエスカレーション対応が起こることがあります。よく新人に見られることですが、この場合はすぐに上席者に電話を代わってもらったほうが無難です。
会社の指示で、「極力エスカレーション対応をせずに対応を完結すること」と定めているコールセンターもありますが、お客様自身がストレスを感じながら話を続けるよりは、知識が豊富な上席者に代わって対応したほうが良いことが多数です。
一次対応者に失礼な言動があった場合
オペレーターがお客様に対して失礼な言動をしてしまった場合や暴言を吐いてしまった場合など、オペレーター自身が原因のエスカレーション対応もあります。
会社の製品やサービスに対するクレームではなく、一次対応者の対応についてのクレームであるため、一次対応者がお詫びをしても怒りが収まらなかった場合は上席者が対応することになります。
この場合、お客様は非常に感情的になっている場合が多いので、電話を代わった上席者は慎重な対応を心がける必要があります。
初めからある程度責任のある立場の社員と話をしたいという場合
- 「ちょっとお話したいことがあるんですが、責任者の方いらっしゃいますか?」
一次対応者とお客様が話をしていないので、段階的な対応という意味合いではありませんが、初めから責任者を指名されるというエスカレーション対応もあります。
既にお客様になんらかのトラブルやクレームがあり、オペレーターと余計な話をせずに責任のある立場の社員と話をしたいというケースです。
エスカレーション対応が起こった場合はどうする?
コールセンターではたびたびエスカレーション対応が起こりますが、一次対応者の知識不足や失礼な言動などが原因の場合には、無理して対応を続けず、
「少々お待ち下さい」
と伝え保留にしましょう。
上席者に代わる前には、多少時間がかかってもお客様が話していた内容をしっかりと伝達する必要があります。伝達が漏れていると、
さっきの人に伝えたんだけど、聞いてないの!?
と更なる怒りを買ってしまうこともあります。上席者への伝達の間に、ヒートアップしているお客様が冷静になり問題解決が容易になることもありますので、しっかりと聞いた内容を上席者へ伝えましょう。
エスカレーション対応を拒否すると火に油を注いでしまう?
仮にお客様から到底無理な要求を受けて「上司に代われ!」と言われた場合、上司に変わったところで出来ないものは出来ません。
しかし、「上席に代わっても答えは変わりませんから!」などと突っぱねてしまってはお客様の感情を逆撫ですることになります。断るのであればしっかりと丁重にお断りすることが大切です。
「上司に代われ!」は拒否できる?
「上司に代われ!」という要求を容易に受け入れてしまえば、上司の更に上の上司、更にその上の社長…とキリがありません。お客様の要求が無理のあるものであれば、結局は上司に代わっても一次対応者と同じことを伝えるだけです。
オペレーターに非がない場合に「上司に代われ!」と言われた場合には、
- 上の者に代わっても回答は変わりませんのでお断りいたします
という対応をするのも一つの方法です。会社の方針として「上司に代われ」と言われた場合のマニュアルを作っておくのも良いでしょう。
上司に代わるだけでも効果アリ?
コールセンターあるあるですが、上司に代わったとしても結局上司がオペレーターと同じ事をお客様に伝えている、ということがあります。人が代わって対応するだけで、同じ事を言っても問題が解決するということもあります。
その場合には、上席者は「出来ないものは出来ない」という落とし所が前提にあるとしても、お客様の心情、心境をしっかり汲み取り、一定の理解を示すことも大切です。
話をしっかりと傾聴するだけ問題が解決することもあります。
エスカレーション対応を防ぐためには?
エスカレーション対応は時に必要な場合もありますが、対応に時間を要するため極力起こらないようにしたいものです。
では、エスカレーション対応を未然に防ぐにはどのようにすればよいのでしょうか。
一次対応者の知識不足を改善する
一次対応者は、業務に必要な知識をしっかりと覚えお客様対応に臨む必要があります。専門的なことを質問されるならまだしも、知っていて当然と思われれることに即答できないと、
「そんなこともわからないのか!」
とクレームに発展し、エスカレーション対応となってしまうことがあります。
会社側は定期的に社員の理解度テストなどを実施し、業務知識の向上を促す必要があります。
言葉遣いをしっかりする
話している内容は間違っていないにもかかわらず、言葉遣いや敬語の使い方を誤ってしまうと、
「言葉遣いがなっていない!」
とお叱りを受け、エスカレーション対応に発展することがあります。
私が経験した限りでは、特にご年配のお客様から指摘されることが多かった印象があります。
しっかりとした敬語を身につけ、お客様対応に臨みたいところです。
感情的にならない
お客様から暴言または理不尽なことを言われた場合、お客様に感化され同じ波長で言い返してしまうことにより、エスカレーション対応となってしまう場面を多数見てきました。
こうなってしまうと問い合わせの内容云々よりも、その社員の態度についての話に転換してしまいます。
このような事態を防ぐには、お客様の発言に対し感情的にならずに、冷静さを保つことに努めることが大切です。
エスカレーション対応が起こってしまった場合はどうする?
どんなに電話対応が上手でも、時にエスカレーション対応は起こってしまうものです。エスカレーション対応の際に、上席者が真っ先にすべきことがあります。
理由がどうであれ、まずはお詫びの言葉を述べる
上席者に代わった後すぐにお詫びの言葉があると、その後のお客様との話し合いが良い方向に進むことが多いにあります。
こちら側に非があるかないかにかかわらず、ご不快な思いをさせてしまったことについてまずはお詫びをしましょう。
謝ることによってこちらの非を認めたことになるため、事実確認を先にするという方針の会社もあるようですが、事実を認めて謝るのと、お客様の感情を害してしまったことについて謝るのは全く別のものです。
お詫びの言葉の1つもなくお客様と張り合っていては、怒りが鎮まるどころかさらにヒートアップしてしまうでしょう。
さいごに
今回はエスカレーション対応の詳細についてお伝えしました。なるべく穏便にお客様対応を行いたいものです。