ビジネス上やコールセンターでの電話対応では、まず第一に徹底した本人確認を行うことが重要とされています。
本人確認が必要である理由は大きく分けると下記の2つに分けられます。
- 第三者への個人情報漏洩防止のため
- 契約者へのなりすまし防止のため
通常、窓口などで本人確認をするときには、身分証明書(免許証や保険証など)を用いて行われますが、電話ではそのような証明書を用いて本人確認を行うことができません。
電話対応ではお客様の口頭申告によって本人確認を行わなければなりませんので、申告内容の正誤を確認することはもちろん、虚偽の申告ではないかどうかを確認する必要もあります。
今回は電話で本人確認を行う方法、マニュアルについて事例を用いて解説します。
電話での本人確認はどう行う?マニュアルと対応事例について
本人確認はなぜ大切なの?
電話では相手の姿が見えません。電話対応を進めていくうえで、電話の相手が確実に本人であることが大前提となります。
本人確認を怠ると、契約者の家族や第三者へ、本人の個人情報が知られてしまうというリスクがあります。
個人情報の例として、
- 氏名
- 電話番号
- 住所
- 勤務先
- クレジットカード番号
- メールアドレス
- 家族構成
- 趣味、嗜好
- 年齢
- 性別
- 最終学歴
などがあります。個人情報と言われるものは近年増えつつあり、例えばパソコンやスマホの閲覧履歴なども個人情報に該当すると言われています。
このような個人情報を外部(第三者)へ漏洩してしまうと、大きなトラブルへと発展する恐れがあります。
お客様の大切な個人情報を守るため、本人確認を十分に行い、電話の相手がまさしく本人であることをしっかりと確証づける必要があります。
電話での本人確認はどうすれば良い?
電話で本人確認を行う上で最も重要な事柄は、
「どのような基準で電話の相手を本人とみなすか」ということです。
言ってみれば本人確認を厳密に行う会社もあれば、そこまで厳密に行わない会社もあるということです。大企業ほど個人情報漏洩について非常にシビアで、本人確認を徹底している傾向があります。
その会社が定めた本人確認のガイドラインに沿って、本人確認をすすめていくというのが通例になっています。
電話での本人確認方法
電話で本人確認を行うには、まず第一に相手の名前を「フルネーム」で確認することです。
名字だけの確認では、家族の誰かが電話で話しているという可能性もあります。
また、フルネームを申告してもらった後には、
- 「失礼ですが、お電話口の方は〇〇様ご本人様でしょうか?」
と、電話口の方が契約者本人かどうか確認するようにします。よくある例ですが、家族の方が自分の名前を名乗らず契約者名を名乗り、問い合わせをしてくることがあります。
例
契約者の妻「山田太郎ですけど、今月の請求金額の内訳を知りたいんですが」
このように明らかに契約者ではない方からの電話の場合には、
- 恐れ入りますが、お電話口の方のお名前を教えて頂けますか?
- 失礼ですが、ご契約者様とのご関係も教えて頂けますか?
とクッション言葉を用いて入電者の名前と関係性を確認するようにします。
本人確認を行う時の言い方について
何の前置きもなく「ご生年月日を教えて下さい」と尋ねるのは不遜です。本人確認を行うためという理由をあらかじめ伝えてから、確認するようにしましょう。
- 恐れ入りますがご本人様確認のため、ご生年月日をお伺いしてもよろしいでしょうか?
この「ご本人様確認のため」というフレーズをしっかりと覚えておきましょう。
では実際に本人確認を行う際の、パターン別の確認方法をお伝えします。
パターン①「氏名+生年月日」
最も一般的な本人確認方法と言われています。病院などではこの方法で本人確認をとっているところが多いようです。
ただし契約者の家族や親しい人には生年月日は知られているので、厳密な本人確認とは言えないかもしれません。
パターン②「氏名+暗証番号」
契約者以外には知り得ないのが暗証番号です。4桁のものが一般的で、携帯会社などでは「ネットワーク暗証番号」と称していることもあります。
他人から推測されやすい「誕生日」や「ゾロ目」、「1234」などのシンプルな数字を設定してしまうとなりすましの危険性が増大します。
パターン③「氏名+住所」
こちらもごく一般的な本人確認方法です。番地やマンション名、部屋番号まで全て申告してもらって初めて本人確認が成立します。
パターン④「氏名+電話番号」
このパターンは、相手方が公衆電話を使用して電話をかけた場合や、非通知でかかってきた場合には有効です。
パターン⑤「登録の電話番号へ折り返す」
本人確認が十分に行えなかった場合の手段として、もともと登録のあるお客様の連絡先に折り返すという方法もあります。
この時に注意したいのが、登録の電話番号を口頭で伝えないことです。伝えてしまうと万が一第三者からの入電であった場合に情報漏洩になってしまいます。
情報開示はイエスorノーで行う
本人確認を終えた後には、電話での対応を進めていきますが、情報の開示についてはより一層の注意が必要です。
特に下記のように、個人情報を聞き出すような質問には要注意です。
- 私の住所って今どこになってますか?
- 私のクレジットカード番号は何番で登録されてますか?
- 引き落とし口座はどの銀行になってますか?
本人確認を終えた後であっても、このような質問に対して安易に答えるのは危険です。
便宜上本人確認を終えたとしても、100%本人であるという確証がないからです。
ただし、本当に電話口が本人で、本人が必要としている情報である場合には情報は開示しなければなりません。
そのような場合には「イエスorノー」で情報開示をすることで、リスクを軽減することができます。
つまり、こちらから情報を開示するのでなく、確認したい情報を相手に申告してもらい、その申告内容が登録されているものと合っているかどうかを回答するということです。
たとえば「いま登録されている住所の確認をしたい」という申し出があった場合には、住所を申告してもらいそれが合致しているかどうかを回答します。
このように対応する理由の説明として、
- 個人情報保護のため大切な情報は申告頂き、内容が合致しているかどうかを回答しております
- 個人情報保護のため、お客様情報が非表示になっており、申告頂いた内容を入力し合致した場合に表示されます
という説明が望ましいでしょう。
情報開示の対応例
〇「確認いたしますので、思い当たる銀行名と口座番号を教えて頂けますか?」
〇「確認いたしますので、まずは現在お住まいのご住所から教えて頂けますか?」
明らかに本人でないことが分かった場合
これは私の実体験ですが、コールセンターで働いていた時、こんな電話がありました。「クレジットカードの利用明細を知りたい」という内容です。
本人であれば開示はできるのですが、明らかに登録されている生年月日とはかけ離れた初老の男性の声でした。おそらく父親かと思われます。
本人確認時に「いまお電話口の方は契約者ご本人様ですか?」と尋ねても「そうです」との返事。
ところが生年月日を申告してもらう際、相手は言葉に詰まってしまいました。さらに電話の後ろの方で、
「太郎(仮名)の生年月日はいつだったっけ?」という話し声まで聞こえます。奥さんと思われる方が「〇〇年〇月〇日よ」と言っているのも聞こえます。
結局、情報開示はせずに終わりました。ここまで明らかに本人でないと分かった場合には、ご本人様から再連絡をするように、と丁重に伝えることも大切です。
断り方の例
- 「いまご本人ではないと思われる会話が聞こえましたので、情報の開示は致しかねます。恐れ入りますが、ご本人様から再度ご連絡を頂けますか?」
後日わかったことですが、息子のクレジット代金がいつもより高額になっていたことに驚いた父親が、心配して電話をかけたということでした。
電話での本人確認時の注意点
相手の声で別人と判断しない
かつてコールセンターにてこのような事例がありました。
男性契約者の携帯電話に電話をかけたところ、女性の声の相手が電話に出たため、
- あれ、〇〇様ではないですか?
と、あたかも相手が本人ではないような対応をしてしまったためクレームになった件がありました。あくまでも声の印象とは主観的なものであることを念頭において対応を進めていく必要があります。この場合は、
- 〇〇様の携帯電話でよろしいでしょうか?
と確認し、本人確認を進めていく必要があります。
さいごに
今回は電話での本人確認方法やマニュアルについて解説しました。ビジネスや会社での電話対応、店舗経営の方などに参考にしていただければと思います。